石田ようこ 犬と猫の歯科クリニック

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病気コラム

  • 無麻酔処置にこだわりすぎて陥る罠

    世の中には無麻酔の歯石除去を行っている方が多くいらっしゃるようです

    麻酔に漠然とした不安を持ち、無麻酔で出来るなら、と思うお気持ちはわからなくもありません。

    しかし、歯の表面の歯石を取る処置は、口腔ケアとしてはあまり意味がないということをご存知でしょうか?

     

    歯周病ケアで大切なのは、歯石(死んだ菌の塊)を取ることではなく、歯垢(生きている菌の塊)を取ることです

    その歯垢が潜む歯周ポケットの中をきれいにすることです

    ところが、無麻酔処置で出来るのは表面の歯石を取ることだけです

    なぜなのでしょうか?

    歯周ポケットの清掃は無麻酔では拷問に等しいからです

    人は処置の意味が理解できるので多少の傷みは許容できますが、処置の意味がわからない動物たちにとっては、長時間押さえつけられ痛いことをされるのは恐怖でしかないと思います

    逃げたくて暴れたら、とがった器具が歯肉や舌を傷つけ更に痛い思いをします

    それにうんと奥の歯や、歯の内側の処置もどう頑張ってもちゃんと出来ません

     

    無麻酔処置をして白い歯が見えるようになると良くなった感じがするかもしれません。

    でも、口臭は消えましたか?

    口臭が残っているならその処置には意味がないとお考え下さい。

    口臭の元は歯石ではなく歯垢です。

    その歯垢は歯周ポケットの中に多くあり、見えている歯石を取っても一緒には取れてくれません。

    何度でも書きますが、悪さをするのは歯垢です!

     

    この症例犬さんは定期的な無麻酔処置を受けていたそうで、確かに歯石は少ないのですが歯肉には大問題が起きていました

    無麻酔処置では歯周ケアが出来ていなかったこと、届かない箇所は放置されていたことが原因となり、歯肉も顎の骨も溶けてなくなっています

    本来は骨に埋まっているべき歯根が丸見えで、唇をめくるだけで出血し、歯肉を圧迫すると膿がドロドロ出てきました

    X線検査の結果、19本抜歯となってしまいました

     

      

    ↑ 一見歯の表面に汚れは少ないですが、上顎切歯は歯肉も骨も溶けてなくなってしまい

    全て歯根が露出しています

     

    ↑ 緑点線が元々の上顎の骨の長さで、赤点線が現状です。1cm位顎が短くなっています

     

    無麻酔という言葉は魅力的ですが、弊害が多いのが事実です

    麻酔は絶対に安全とは言い切れませんが、適切な術前検査と対策を行い安全性を高めることは可能です

    高齢だけを理由に諦める必要もありません

    抜歯のための麻酔ではなく、歯をキープするための麻酔処置をぜひご検討頂きたく思います

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